放射温度計とは、物体の表面から放出される赤外線エネルギーの強度 (放射) を測定することで、非接触で表面温度を測定することができる温度計です。
一般的には「放射温度計」と呼ばれますが、赤外線の原理を用いることから「赤外放射温度計」や「赤外線温度計」とも呼ばれます。物体によって異なる放射率を正しく設定することで、物体の表面の温度を高精度に測定することができ、あらゆる産業分野で活用されています。
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに広く使われるようになった非接触式の体温計・検温計も同じ原理を用いていますが、これらの機器では、腕やおでこの皮膚表面の温度から深部体温に換算した数値を表示します。
※テストー製品は産業分野に向けて設計された放射温度計です
放射温度計の仕組み
放射温度計には赤外線センサが用いられており、レンズで集光した放射を測定します。測定された赤外線のデータは、基準温度や放射率をもとに温度に換算して、表面温度の測定値をディスプレイに表示するという原理です。
赤外線は可視光線の赤色より長い波長を持つ、目に見えない電磁波です。放射温度計は、この赤外線を遮るものがない限り測定距離の制限はなく、遠くに離れた物体の表面温度を測定することができます。ただし、測定対象が離れるほど測定視野が大きくなり、広い範囲の赤外線を検知してしまいます。対象の大きさや距離、スポット比をもとに、最適な放射温度計を選定する必要があります。
スポット比について
放射温度計はモデルによってスポット比が異なります。これは赤外線を検知する測定視野を表したもので、放射温度計を選定する際に重要な仕様の一つです。
レーザーについて
多くの放射温度計にはレーザーポインターが搭載されており、測定しているエリアを視覚化することができ、特に測定対象と距離が離れている場合に役立ちます。非接触式の温度計を「レーザー温度計」と捉えられる場合がありますが、レーザー自体が温度を検知している訳ではありません。
- 1ポイント (testo 810、testo 830-T1等):
円状の測定エリアの中心を照射します。対象が離れている、または対象が小さい場合は適していません。
- 2ポイント / 4ポイント (testo 830-T2、testo 835シリーズ):
円状の測定エリアの上下や上下左右を照射します。対象が離れている、または対象が小さい場合に適しています。